「流川っ、見てっ、お風呂!」
興奮した私が振り向くと、流川はやれやれと言った感じで笑っている。
「分かったから。とりあえず閉めとけ。部屋が冷える」
もー、相変わらず冷静なんだから、と思っていると、
「は……くしゅんっ!」
でっかいくしゃみが出た。
うん、確かに寒い。
着いた時よりも、空気が冷えてきてる感じがする。
扉を閉めて座イスに座った私をニコニコと見ていた仲居さんは、
「このあたり、今夜は大雪注意報が出てるんですよねぇ」
と言って、窓の外に視線を向けた。
そして思わぬセリフをぽつり……。
「……もしかしたら……出るかもしれませんねぇ」
「出る? って? 何が?」
首をかしげた私に、
「……幽霊です」
「へぇ~、幽霊……って、え? ゆ、幽霊っ?!」
な、何を言い出すんですかっ、急に!
しかもご丁寧に両手を前でぶら~んとしながらっ!


