「でね、おもしろい話を聞いたよ」
「面白い話?」
「入院中にね、生死の境をさまよったって話」
「ええっ? そんなに悪かったんですか?」
「どうだかね。今の状態からは想像も出来ないけど、そんな話をするくらいだからやっぱり悪かったんだろうね」
お茶も何もないから、沸かしただけの白湯を差し出すと、後藤さんはそれをごくんと飲んで話を続けた。
「2日間くらい眠り続けたらしいんだけどさ、その間、三途の川を見て来たって」
「三途の川?」
「そう、こっちとあっちの世界を分ける川さね。両岸にはそれはそれはキレイな花畑が広がってて、渡り船まであったらしいよ」
「へぇ……」
たま~に、そういう話をテレビでやってるのは見たことがあるけど、実際に経験した話なんて初めて聞くなぁ。


