私はパンを袋に詰める。
バイトを始めて長いのに、こんなに緊張するなんて…。


「はい、230円で。」
「では、230円、お預かり致します。」

心臓がドキドキドキドキ…とすごく速い。


「6円のお返しと、レシートでございます。」

渡すときに手に触れる。

ーどきっ


あっ…

「しょ…少々お待ち下さい!」

私はお買い物袋にパンを入れる。
恥ずかしくて顔を上げれない。

「明日、卒検?」
「あ、はい…。」

ゆっくり顔を上げる。

「力を抜いて、頑張って。」
「はい。ありがとうございます…。」

ふと、この前頭をポンポンとしてもらったことを思い出す。

ポッと顔が赤くなるのがわかる。

ダメダメ!!
顔よ、赤くなるな〜!!

「お待たせ致しました!」
ちらっと瀬口先生の方を見ると…

パチッ
と目が合った。

「ありがとう。良い仕事ぶりやね。また買いに来るから。良い報告、待ってるね。」
「あ、ありがとうございます!!はい!!」

「じゃあ、また!」
「はい!」

瀬口先生は手を振って帰って行った。



何が起こったのかわからなかった。


瀬口先生が…バイト先に…

しかも…教官のときと違って…私服。



ーかっこよかった…。


ドキ…ドキ…



まだドキドキが止まらないよ。


「お姉ちゃん、このパン美味しいわ!2個も買っちゃうわね!」
「あ、ありがとうございます!いらっしゃいませ!」



バイト先にまで来てくれる…って、期待しちゃってもいいのかな?