「もうすぐ終わりやね。運転は仕上がってきてるから、あとは色々経験をしてこ。」
「はい。」

「よし、じゃあ今日の目的地は…」

地図を広げて場所を探す。

どうやって行くのかを自分で考える。

「左折して…」

「うん。その行き方であってるな。じゃあ出発しよか。」
「はい。」

「夏休みなんか予定あんの?」
「いえ、まだ特に…。」
「そうなんか!彼氏と海行ったり〜とかないん!?」
「いや〜、まず…彼氏…いないですしね?」
「え、いやいや、おりそうな顔して。」
「まじでいませんよ〜。これ以上言わないで下さいよ。」

今まで色んな話してきたけど、突然ぶっこんできてびっくり。

「いい男、きっと近くにおるやろな。」
「え?」
「いやいや…意外と近くにあるもんやろな〜って。あ、自転車、気をつけよ。」
「あ、は、はい。」

近くに…あれば、いいな。


私は瀬口さんのことしか考えられない。


教習所マジック、とかでなく。


本当に。好きになっちゃった。


「教官…ってモテそうですよね。」
「まあ〜、モテる人はモテるな〜。俺も昔は…」
「やっぱり先生ならモテモテだったんじゃないですか??」
「まあ…な。連絡先渡されたことあったかな。」
「へぇ…やっぱりあるんですね…。」

私はそこまでできない。

「成るように成る、ってやつやな。」
「え…」
「免許取るのも、恋も、全部成るように成るからな。はい、じゃあ教習所戻ろうか。」
「は、はい!」

佐々木先生にそんなことを言われると、私が教官の誰かのことが好きだってことに気づかれてるように思えた。