瀬口先生が何か紙を持ってバスの運転手さんのところを回っている。




え、先生…??


私の乗る車に向かってくる。


「遅くなってごめんなさいね〜、市駅ですよね?」

瀬口先生が運転席に乗ってきた。
急いでいる様子でチャチャっとシートベルトをする。

「あ。」
と思わず声が出る。
「あ、久しぶり!…でもないか!」
「です…ね?」

この前の検定のときに少し喋ったもんね。

「じゃあ、市駅まで運転手させてもらいますね〜♫」
「お願いします!」


すごく嬉しい。
先生の運転で帰れるなんて!

先生との距離近いし!先生の真後ろ!
っていつも隣だったし、それはそれで近かったよね?


「あ、先生!私、合格しましたよ!仮免学科試験!」
「お!おめでとう!!」
「ありがとうございます!!」

直接言えた!!報告できた!!
ミラー越しに目が合った。

「だってあんなに必死に教本見てたからね。」
「え!?」
もしかして、見られてた??
あのとき感じた視線は先生だったの??

「ロビーでじーっと教本見てたからさ、声掛けれなかったって。」
「え、まじですか!見られてたとは!」
「パワーは送ってたよ。目力で。」
「わ〜、じゃあ先生のおかげですね!」
「でしょうね♫」


「じゃあ〜、これは俺からのご褒美ってことで。今は送迎じゃなく、ドライブ、ってことで。」
「え、ご褒美!?」
「ドライブって夜とかの方がいいけどね。そこは許して。」
そう言ってもらえるだけで嬉しい。


あと、今まで担当してもらってたときは先生も私に対して敬語だったけど、敬語じゃなくなってきてる。
それがちょっぴり嬉しい。
先生との距離が縮まってるようで。


「はい!やったあ!」
すごく幸せな気分。
先生と…好きな人と一緒に乗ってる。
好きな人の運転。


「じゃあ、これからいよいよ路上だね。」
「路上…めっちゃ怖いです。」
「大丈夫、大丈夫。安全運転してたら♫」