微熱で溶ける恋心



「ねー、今の子誰かしら?」


2人がトレイを持ち奥へと消えていくと、早速パートさん達が私に詰めかける。


「きっと和食会席のとこの子よね?」


「そうじゃないですか?」


「やだ、逸平くんの彼女かしら?」


そこまでは知らないよ、とあしらうと、それでも消えない野次馬魂。


「だって美人だったじゃない。どうするの、支配人?」


「どうするも何も・・・」


何もないよ、と肩をすくめる。


こう言う時お客さんが1人も来なくて困る。


その時。





「えっ、だって逸平くんって支配人の彼氏じゃないの?」


聞き捨てならないことを言ったパートさんに溜息を吐き、


「違うから。ほら仕事して、仕事」


時給高いんだからね、分かってる?と追い打ちをかけると、みんな舌を出して持ち場へ戻っていった。