微熱で溶ける恋心



「また明日」




そう言った逸平が次に顔を見せた時、少し違和感を覚えた。


隣には和服を着こなし凜とした表情の女性。


スラッとした逸平の隣にお似合いの美女だった。




私に軽い挨拶をすると、


「何食べる?」


彼女は柔らかい笑みを崩さぬまま、私に、


「オススメは何ですか?」


と問いかけた。


きっと最上階にある和食会席の従業員だろう。


彼女の好みは何も分からないけど、一通り、本日のメニューの説明と僅かなセールスポイントを口にすると、


「やけに丁寧だな」


俺にはいつも冷たいんだよ?と逸平は唇を尖らせる。




「そんなことないですよ」


私は素を出さないようさらりとかわすと、彼女は微笑みながら、


「じゃあメンチカツ下さい」


その容姿からは意外ながっつりなメニューのチョイスに、ますます心が曇った。