微熱で溶ける恋心



逸平は身長も高いし、姿勢も良いし、スラッとしているからさぞ映えるだろう。


私が出会った時はもう既にチーフだったけれど、昔はそうやって下積みを重ねていただろうし。





「ほら、結婚式だしさ、人集められなかったのはこっちの都合で、それで迷惑かけたら悪いじゃん」


こんな言葉がスラッと出てくるプロ意識も好き。


「結婚式かぁ」


「何?結婚願望湧いてきた?」


逸平の問いかけには笑うだけで答えない。




「俺なんてしょっちゅう結婚したいなぁ、って思うよ。この仕事してると」


「・・・うん」


私が急にごにょごにょした意味を理解した彼は、


「まぁ良いんだけどさ」


なんて呟き、ごちそうさま、と席を立つ。


「もう行くの?」


「仕事残ってるんだ、山ほど」


「そっか」


他の人に残業させられないのはお互い様か。





「美味かったよ。また明日」


そう言う彼の背中を見送り、私は綺麗に完食された食器達を片付け始めた。