微熱で溶ける恋心



「お疲れ様」


「ありがとう」


ゆるり、微笑むこの顔は仕事中きっと見せていないのだろう。


以前逸平が、


「自分が気を抜けるのはこのホテルでここと仮眠室くらい」


と言っていたのを思い出す。


あとはチーフとして、最高のサービスマンとして、日々気持ちを張り詰めているのだろう。






「明日は?」


確か今週日曜は公休だった、と言っていたのを思い出す。


「休み・・・だったんだけど休みじゃなくなった」


「そうなの?」


深い溜息を吐いた彼は、


「派遣会社が急に人が集められなかった、って言ってきて。ムーンが2欠なんだよ」


「それはそれは・・・」


「だから俺が休日出勤で、珍しくホールに出ます」


チーフがシャンパン注ぎとか相当高く付くヘルプだよな~、なんて笑っている。




「逸平が指示出しすればいいのに」


「それじゃ後輩がいつまでも仕事できないじゃん」


元々俺は休みで、そいつに仕事任せてたんだし、と口をもぐもぐしながら正論を吐く。