微熱で溶ける恋心



1人で食堂に来ても、必ず誰かと相席をしている。


たまにがらがらの時間に来ると「暇でしょ?」と私と話しながら食べる。


「顔良し、性格良し、仕事良し」で通っている蔵原逸平の意外な一面を見れるのは、実はここだけ。


きっと誰も気づいていないだろう。




「今日はこれと何だったの?」


「鰺のムニエル」


「鰺か。好きだけど、昼魚だったからな」


「そう思ってこっちにした」


私はついさっき買って貰ったコーヒーをちびちび飲む。


さすが川上、と得意げな逸平。



「美味い」


「ありがとう、58歳還暦間近の調理師さんが作ったの」


「・・・あっそ」


途端につまらそうに応える。





「そう言えば今日、ヘルプ達営業時間内に間に合った?」


「ギリ。でも助かった」


「良かった。今日の人たちなかなか帰ってくれなくて、全然片付けられなくてさ」


なるほど、それでこの時間か。