「10年近く獣医してるっていうのに、まだまだだな。もしかしたら“何でもできる”くらいの自惚れを持っていたのかもしれない。何に対しても、初心忘れるべからず、って基本なのにな?……って、ごめん。こんな話聞かせて」
「……」
「何かもう、どうしても誰かに聞いて欲しかったんだ。ごめんな」
「~~っ!」
苦笑いしながら私に詫びてくる虎谷先生に、私は必死に首を横に振ることしかできなかった。
先生は間違ってない、ってもっとちゃんと言葉で伝えたいのに……私から出てきたのは、何故か涙だった。
慌ててそばにあったティッシュを取り出し、拭う。
「不安になったよな?俺が担当医で」
「ち、違……っ!」
「ふ、ほんと坂本さんは優しいな。坂本さんに飼われてるコタロウは本当に幸せだよ」
「……」
「うん。でも、これからもコタロウのこと、しっかり診ていくから……俺のことを信じて任せてもらえる?」
「……!」
虎谷先生の言葉に、声には出せなかったけど『当たり前です!』と首を縦に振ると、虎谷先生は「良かった」と安心した表情を浮かべた。
患者さんに対してあんな風に熱く言ってしまったことは、本当に動物が大好きで大切に思っているからこその行動だってことは、虎谷先生を見ていれば一目瞭然だ。
だから、これからもそんな先生にコタロウのことを任せたいと思うのは当然のことなんだ。

