キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~

 

不穏な空気と飛び交う物騒な言葉たち、そして、いつもの冷静さをなくしてしまっている虎谷先生に、私の心臓の心拍数は上昇してしまっていた。

嫌な予感で私の頭の中がいっぱいになる。


「権利?3年もかわいがってきたんだから、十分いい想いをしてきただろう?それに……一緒に連れて行くのは無理なんだよ。もう時間も差し迫ってきているし、引き取り手を探す余裕もない。……それなら、苦しむことのない安楽死をさせるのが一番なんだよ!それが最後にできる飼い主としての責任だ」

「!!」


男性の口から飛び出してきた“安楽死”という言葉に、口から飛び出してしまうんじゃないかと思うくらい、心臓が大きく跳ねた。

胸が苦しくて、無意識に強く拳を握った両手を胸に当ててしまっていた。


「……飼い主としての責任?そんなもの、あなたにはない!責任があるというのなら、元気な動物を殺」

「先生!……それ以上は」

「!……悪い」


西岡さんが虎谷先生の言葉をさえぎると、先生は自分を落ち着かせるようにして、フゥと息をついた。


「……考え直してください。田辺さん。あなたはそんなに簡単に切り捨てられるほど、この子に愛情がないとは思えないんです。どうか、もっといい方法を考えてあげてください」

「……」

「お願いします」


虎谷先生は男性に向かって、深く頭を下げる。

その姿に私は目を奪われる。

さっきよりは穏やかな声色と雰囲気になったように見えたけど、その裏にはまだ虎谷先生の強い怒りが見えたから。

男性はそれ以上は何も言わず、虎谷先生から目線を外し、病院の外に出て行ってしまった。

そこにいた全員が、その男性と抱えられたワンちゃんの後姿を見送っていた。