「私はいいと思いますよ?そんなにお好きなら、もしかして先生もネコちゃんを飼っていたりするんですか?」
「ううん。飼ってたらこんなところにいないで、家に引きこもってるよ」
「あ、そっか。確かにそうですよね」
妙に納得してしまう。
でも、そんなに好きなら飼うものじゃないの?
もしかして、飼えない事情でもあるのだろうか。
そう思った時、先生が私の心を読んだかのように話し始める。
「何でネコを飼わないのかって思ってる?」
「あ、はい」
「何ていうのかなー。……そう、距離感を保つために、動物は飼わないって決めてるんだ」
「距離感、ですか?」
「そう。大袈裟かもしれないけど、どの患者に対しても対等に接したいっていうのが“信念”というかさ。一番を決めてしまったら、その一番しか見えなくなるんじゃないかっていう不安もあるし。まぁ、実際はそうなってみればそんなこともないんだろうけど、今はまだ自信ないから」
「……距離感、かぁ。わかるような、わからないような」
うーんと首を傾げると、虎谷先生は柔らかく笑った。
その表情がまた初めて見るもので、私の心臓はドキッと音を立てる。
「まぁでも無性にネコに触りたくなることもあってさ。そういう時はこんな風に散歩してごまかしてるっていうか……あ」
「!」
しまった、という表情を浮かべた先生に、私はつい吹き出してしまった。
なるほど。
先生は『隠れネコ溺愛男子』だもんな。

