キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~

 

記憶を辿っていると、男の人の表情が少し驚いたようなものに変わる。


「嘘。もしかして、俺が誰だかわからないとか?そんなに変わるかなぁ」


無造作に跳ねた髪の毛をその手がきゅっと押さえつけた時、私の頭の中に一気に記憶が蘇った。


「……あっ、虎谷先生!?」

「うん。くくっ」

「ご、ごめんなさい!」

「いや、いいけど。くくっ」


「俺、無意識に変装してたんだなぁ~」と可笑しそうに笑いながら髪の毛をわしゃわしゃと崩す虎谷先生に対して、ほんの少しだけ鼓動が速くなったのはきっと気のせいではないだろう。

髪型や口調、表情が違うだけで動物病院での先生とは雰囲気ががらりと違っていて、何だか違う人と話しているような感じがする。

きっとここで患者さんが通りがかっても先生のことに気付く人はあまりいないんじゃないだろうか。


「散歩中?」

「あ、はい。ちょっと買い物帰りに休憩を。この公園が好きで買い物の帰りによく来るんです」

「ふぅん」

「先生もお散歩ですか?」

「あ、うん。まぁ。あ、コタロウは留守番、だよな?」

「はい。お昼寝しちゃったのでその間に買い物しに来てて。そろそろ起き出して遊んでそうですけど」

「そっか。室内飼いは基本だもんな。外は危険がたくさんだし」

「そうですね。コタロウは部屋の中だけで満足みたいで、外には興味はあまり示さないので助かってるんです。ネコちゃんによっては脱走しちゃったり大変なんですよね?」


コタロウを譲ってもらう時に璃世に『脱走には気をつけて』と何度も念を押されたものだ。

マサコちゃんは自分からは外に出たことはないらしいんだけど、近所のネコちゃんがよく脱走をしているらしく、璃世は探すのも手伝うらしくてその大変さをよく知っているのだという。

『見つかればいいけど、帰ってこないとむなしいだけだからね』と言っていたのを思い出す。