「マサコちゃんも寝ちゃったし、俺帰るな?明日も様子見にくるから。大丈夫だと思うけど、もし何かあったら呼んで」
樹さんはひらひらと手を振って、玄関の方へ向かう。
私は何も言えないどころか身体を動かすこともできずに、消えていく樹さんの背中をただ眺めていた。
見送らなくていいの?
樹さんに気持ちを伝えなくていいの?
そう思ったその時だった。
ケホッケホッと聞こえてきて、その方向を見るとマサコちゃんが俯いて咳をしている姿があった。
「!マサコちゃん!?」
今まで動かなかった身体が嘘のように、私は反射的にマサコちゃんのそばに駆け寄っていた。
目の前ではマサコちゃんが何かを吐きたいかのように苦しそうに咳をしていて、私は一気に血の気が引いてしまう。
具合悪いの?それとも、さっきあげたご飯がダメだった?
私はぐるぐると考えるけど、もちろん答えなんて出てくれるわけはなかった。
コタロウはマサコちゃんの咳の音で目が覚めたらしく、立ち上がったままマサコちゃんのことをじっと見ていた。
「みーこ、どうした?」
「あ!樹さんっ!マサコちゃんが……!」
私の声に気付いたのか、樹さんリビングに戻ってきてくれた。
そうだ、樹さんがいたんだ……!
樹さんは獣医さんだ。
マサコちゃんの様子を見てもらえる、と一気に私の中に安心感が生まれる。
ケホッケホッと咳をするマサコちゃんに樹さんが触れようとした時。
マサコちゃんの口からぽろっと茶色の塊が出てきて、私はさらに焦ってしまう。

