熱くなってしまった頬を冷やしたくて、両手でパタパタとあおぐ。
璃世はからかう様子もなく、キレイな笑みを浮かべて口を開いた。
「美夜子が安心できる存在ができて本当に良かった」
「……うん。ありがと」
「あ」
「え?」
「んー」
「璃世?」
「んー?……あー、これ、やっぱりきちゃったかなー。ごめん、美夜子」
「え?あっ、嘘!もしかして」
陣痛!?
「うん。みたいねぇ。ここ数日痛みはあってさ~そろそろかなとは思ってたんだけど」
「きょ、局長!来てくださいっ!」
へらへらっといつものように璃世は笑っているけど、その額にはうっすらと汗が浮かんでいた。
私は璃世の背中をさすりながら局長を呼ぶ。
すると、局長がはっと立ち上がって、璃世に向かってきた。
「大丈夫か?」
「うん、たぶん」
「坂本さん、悪いけど」
「あっ、私たちのことより、璃世を」
「うん。ありがとう」
局長は穏やかに言ってくれるけど、きっと内心では璃世と赤ちゃんのことでいっぱいだと思う。
「あれ?痛くない。よし、今のうちにどうすればいいか病院に相談しよ」
「あっ、俺やるから!りぃは座ってて!」
「いいの?ありがとう~」
バタバタと電話に向かう局長を、すっかり笑顔と余裕が戻った璃世が見送る。
陣痛って痛い時間と痛くない時間が交互に来るんだよね?
出産の経験はないけど、それくらいは知っているつもりだ。

