*
「超イケメン!」
璃世と伊野局長の家に着き、玄関先で樹さんを見た璃世が挨拶もせずに言い放った言葉がこれだった。
焦った私は、璃世の腕を軽く掴む。
すっかり大きくなったそのお腹の中の赤ちゃんを驚かせないように。
「ちょっと璃世!?急にそんなこと言ったら失礼でしょ!?」
「だって!本当のことだもの!」
「確かにそうだけど、せめてもっとじっくりと攻めてよ!璃世は直球すぎるの!」
「……いや、みーこ、それもどうかと思うけど。っていうか、みーこ、俺のことそんな風に思ってたわけ?初耳」
「!」
樹さんがイケメンだということは誰が見ても明らかなことだけど、さすがに本人目の前で『イケメン』と言えるわけもなく、こっそりひっそりとその言葉を心の中に仕舞っておいたのだ。
なのに、その本音が璃世のせいでついぽろりと出てしまった。
焦る私を見ながら、樹さんがニヤニヤと笑ってくる。
絶対、愉しんでる……!
この発言に対して後でどんな風にほじくりかえされるんだろうかと思うと、ちょっと……いや、かなり憂鬱になった。
「みーこぉ!?ちょっとぉ、なになにっ?美夜子ってばそんな風に呼ばれてるの~!?いや~ラブラブいちゃいちゃカップルじゃないのっ!この前話聞いた時とは大違い!」
「この前?って何?」
「!や、こっちの話です!もうっ、璃世は黙っててよ!」
「やぁだぁ!やっと美夜子に彼氏ができたんだもん!私にはじっくり観察して見極めるっていう使命があるんだから!」
「もう、璃世ってば!」
「あーほらほら。立ち話もなんだから、入って」
くすくすと伊野局長が笑いながら璃世の肩を『落ち着け』と言うようにすっと抱いて、私たちを促してくれる。
そんな局長に璃世は「こんなにイケメン見たのいつぶりだろう!だって、いつも家にいるのはイケメンじゃないし!」とさくっと言い放っていて、局長は璃世の言葉に対して眉をハの字にして、しょぼんと落ち込んでいた。

