「へぇ、坂本さんって面食いなんだね。道理で俺のことはいつもあしらうわけだ」
「!局長、変なこと言わないでください!そんなことしてないでしょう!?」
「みーこ、伊野さんのこともあしらってんの?」
「そんなことしてません!っていうか、“も”って何ですか!?“も”って!」
「坂本さんには、俺にコタロウがなつかなかったことを何年も言われ続けてるんですよ。酷い話です」
「あぁ、なるほど。そういうところがありますからね」
「ちょっと!樹さん!?局長も!酷いです!」
二人して私を陥れようとして、酷すぎる!
私は頬をぶぅと膨らまして二人を睨むと、二人がぷっと笑い出し、そこにあったちょっとした緊張感みたいなものが緩んだように感じた。
「虎谷さんは?コタロウに怯えられていませんか?」
「あ、僕は……幸運にもなついてもらえていて」
「!そう、ですか」
伊野局長ががくりと頭を垂れた。
それを見て驚いた樹さんが『俺、まずいこと言った?』という表情で私に目配せをしてくる。
コタロウが男の人を苦手としているのに樹さんにはなついていることに対してショックを受けている局長の気持ちがよくわかる私は、ただ笑うしかなかった。
……というか、こんなところでほのぼのと立ち話してる場合じゃないんじゃない?
「局長、あまり長く立ち話してると、璃世に怒られませんか?」
「あっ!マズい!じゃあ、行こう」
「はい」
璃世の家に着いた時、局長が璃世に何やかんやと言われている姿が目に浮かんで、私はつい笑ってしまった。

