「あんなにポーカーフェイスを決め込むのが上手いくせに……何で坂本さんが関わるとそんな風になるの!?何で坂本さんが関わると簡単に崩れるのっ?この前だって、ちょっとからかっただけなのにプンプン怒っちゃってさ!」
「えっ?」
……私が関わると、ポーカーフェイスが崩れる?
一体何の話をしているのだろうか。
今までを思い返しても……樹さんはいつだって余裕の表情だった。
私とコタロウが動物病院に行ってもクールで涼しげな表情を崩すことはなかったし、付き合うようになってからもいつも私をからかって余裕の顔をしていた。
いつだったか一瞬、ポーカーフェイスが崩れた時があった気がするけど……でもそれっきりだし。
いつも余裕なのが樹さんのデフォルト。
……どういうこと?
「……決まってる。みーこのことが好きだからだよ。っていうか、バラすなよ。カッコ悪いだろ」
「っ!」
樹さんの照れた表情が浮かんだ。
……今まで一度も見たことのない表情で、私の心臓がどきりと音をたてる。
「……またそんな顔……っ。私が何年もかけてできなかったことを、たったの数ヵ月で簡単に引き出すなんて……そんなの、悔しいじゃない!」
「悔しいって言われても……そうなるものは仕方ないし」
「……っ」
樹さんがそう言うと、西岡さんは勢いをなくしたようにポツリと言葉を溢していく。
「……簡単に樹の心を独り占めにしてて悔しかったんだもん。だから坂本さんに、私と樹が付き合ってるって匂わせて、ちょっと引っ掻き回してやろうって。ちょっと指輪見せただけなのに簡単に乗ってくれて、ざまーみろって思ってたのに……いつの間にか二人くっついてるんだもん!そんなの悔しすぎる……。だから、別にいいじゃない、少しくらいいじめたって!」
悔しそうな顔をした西岡さんの言葉を私は呆然と聞いていた。
ますます今置かれている状況がどうなっているのかわからなくなって、完全に私の頭の中はパニックだ。
全くまとめることができない。

