でも何も言わずにそばにいてくれるコタロウの存在があたたかくて、コタロウの頭をするりと撫でると、コタロウは目を細めてごろごろと喉を鳴らす。
それと同時に、すっと樹さんの手が私の頭に伸びてきて、私がコタロウを撫でるように樹さんの手が私の頭を撫でた。
「!」
突然のことに少し驚いてしまって身体をびくっとさせてしまったけど、樹さんの手のあたたかさに一気に安心感が私を包み込んだ。
それと同時に涙が出そうになってしまう。
「……やっぱり何かあったんじゃない?」
「っ!」
樹さんの言葉にハッと顔を上げると、樹さんが真っ直ぐと私を見ていた。
その真っ直ぐすぎる瞳に、ついぽろりと心の中にある気持ちを言いそうになってしまったけど、私は必死にこらえる。
もう少しだけ、このままでいたい。
……あと数時間後には覚悟を決めるんだから、今は樹さんのそばにいることを許してほしい。
私はにこっと笑顔を浮かべて、樹さんに答える。
「本当に何でもないですって!樹さんてば、意外と心配性なんですねっ。ほら、コタは今日もかわいいなって思ってただけですから!」
「ねっ」と私は樹さんに笑顔を向けるけど、樹さんは私の顔色を窺うようにして、いつものようには笑ってくれない。
……バレちゃダメ。
頑張れ、私の表情筋。
笑うんだ。
「……本当に何もない?」
「ないですって~。あ、樹さんもコタと遊びます?さっき遊んだくらいじゃ足りなかったでしょう?」
「……うん」
樹さんは納得のいっていないような表情をして私のことを見ていたけど、私はその視線を振り切るようにしてコタロウを樹さんに渡して立ち上がる。
「飲み物でも持ってきますね」と伝えて、私はキッチンに向かう。
いけない。せっかく樹さんと一緒にいるのに余計なこと考えちゃ。
……ずるくてもいいから。
もう少しだけ、1分でも1秒でも長く、恋人として樹さんのそばにいたい。

