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私が決意したこと。

……今日の別れ際に、樹さんに全てを話すということ。

……それまでの数時間だけは、樹さんと恋人としての時間を後悔しないように過ごすということ。


今日はいつもの日曜日のように昼前から先生が私の家に来て、まったりと過ごす時間が流れていた。


「……おかしい」

「え?」

「みーこ、今日なんかおかしくない?何か気付いたら上の空になってること多いし」

「そっ、そんなことないですよー!ねっ、コタロウ!」


じとっと見られている視線を感じて、いつの間にかぼんやりとしてしまっていたらしい私はいつものようにしなきゃと笑顔を浮かべる。

深く突っ込まれると崩れてしまいそうだと、コタロウに話題を移すことにする。

私に背を向けて毛繕いをしているコタロウに話し掛けると、コタロウは私の声に反応してピクリと身体を震わせ、毛繕いを止めて私の方を振り向いた。

今日のコタロウは珍しく樹さんと遊ぶのを早々にやめて、お気に入りのラグの上で毛繕いをせっせとしている時間が長いようだった。

樹さんが来る前にしっかりブラッシングもしたのに、何か気になるところがあるのだろうか?


「コタ、おいでっ。遊ぼっ」


私はコタロウを呼び寄せようとするけど、コタロウは今はあまり遊びたい気分じゃないらしく、『仕方ないな』と言うかのようにのっそりと立ち上がって私の方に歩いてきた。

コタロウが私の膝にトンと前足を乗せて、私の顔を見上げてくる。

コタロウには本音を話しているからか、どこか心配されているように感じてしまった。

かわいいその前足で『元気出せよ』なんて言ってくれてるんじゃないかって。

……実際はそんなことはないのだろうけど。