でも。
やっぱり、普通はそうだよね……。
単なる同僚を、しかも異性の友達をドレス選びに連れていくなんてことはないはずはないんだ……。
そうだとすれば、やっぱり樹さんがあの場所にいた理由は確実に……。
「坂本さん?どうしたの、ぼんやりして」
「あっ、いや、予想してた通りの答えだったので。やっぱりそうですよね!友達が結婚式のドレス選びに仕事の異性の同僚を連れていこうかな、なんて言ってたから……それってどうなのかな、って思って」
「へぇ、珍しい、っていうかほとんどなさそうだけどな。女の子は特に、同僚なら結婚式当日まで内緒にしておきたいものじゃない?」
「確かに……ですよねっ」
「周りも一緒にドレス選びに来てたのは母親だったり、結婚相手だったりだったと思うよ」
「ですよね。あ、ごめんなさい。もう大丈夫です。ありがとうございます!」
「ううん」
胸はズキンズキンと痛むけど、それと同時にくすぶっていた気持ちがすっきりと晴れた気がした。
やっぱり真実はひとつだとわかったから。
それなら、私がすることもひとつに決まる。
心の整理をして……そして……。
……泣いてしまいそうになるくらい辛いけど……このままでいる方がもっと辛い思いをすることになるから。
ふぅ、と息をついて、局長に声を掛ける。
「じゃあ、お先に失礼します」
「あ、坂本さん」
「え?」
局長に声をかけられて目線を向けると、そこには心配そうな表情を浮かべた局長がいて、局長は窺うようにして口を開く。
「……本当に大丈夫?」
「!……ふふっ、何ですか?それ。私は大丈夫ですよ?私、以前に仕事のやりがいを見つけてからは仕事も楽しいし、コタロウもいつも可愛くて癒されてて、最近毎日がすごく楽しいんです!」
「……そっか。ならいいんだけど。……うん」
「局長は心配性ですよね」
「ふ、よく言われる。変なこと聞いてごめんな。あ、コタロウによろしく」
「はいっ!お時間ありがとうございました。お疲れ様です」
「うん。お疲れ様」
ぺこっと頭を下げながら私は挨拶をして、局長を残して部屋を出る。
少しの変化にも気付いてくれる上司の存在はすごくありがたいなと思いながら、私はしっかりとした足取りでロッカールームに真っ直ぐ向かった。