*
私はあの後、二人の姿から逃げるようにして家に帰ってきた。
結局買い物なんてひとつもできなかった。
ご飯を作らないといけないというのに何もヤル気が起こらなくて、ショックが大きすぎて、息が苦しくて、家に着いていつものように手を洗った後、そのまま私はベッドにボフンッと崩れるように寝転んでしまった。
私を出迎えてくれた後、キャットウォークに登って遊んでいたコタロウがそのベッドの音に驚いたらしくリビングの方からそーっと窺うようにやってくる。
「コタ、おいで」と呼び寄せると、コタロウは軽い足取りでベッドの上に乗ってきて、私に寄り添うようにして身体を伏せた。
顔を前足に乗せていて、その姿に胸がきゅんとなった。
私はコタロウの身体を撫でながら、ぽつりと言葉を溢す。
「……ねぇ、コタ。樹さんと会えなくなるの、寂しい?」
コタロウ、あんなに樹さんのことが大好きだもんね?
会えなくなるの、寂しいよね……?
私のせいで寂しい思いをさせることになってごめんね?
でも、あんなに幸せな二人の姿をこの目で見てしまったらもう、二人が結婚することは事実なんだと認めるしかない。
そして……樹さんから離れるために心の準備をしなきゃいけない。
もし私が知らないふりを続けたとしても、いつかは必ず離れる瞬間が来てしまうのだから。
私の目からぽろぽろと涙が流れる。
「うー……っ、やだぁ」
私はコタロウから手を離して身体を仰向けにし、涙でぐちゃぐちゃになってしまっている目元を手で押さえる。
感情が溢れ出してしまったかのようにひくっひくっとしゃくりあげながら、子どものように泣いてしまっていた。

