「!西岡さん……?」
私の目に映るのは西岡さんが幸せそうな笑顔で、制服を着たサロンのスタッフさんと話している姿だった。
嘘、本当に……?
今一番ここにいて欲しくない人がいる。
そして、それが意味することはひとつだった。
ここに西岡さんがいるということは、あの話が本当だとしたら……樹さんもいるということ。
私の心臓がバクバクと鼓動を刻み出す。
その鼓動の音は、これ以上見ちゃいけない、という警鐘のようだった。
……そう、今なら見なかったふりをすることができる。
私が見たのは西岡さんだけで、相手が誰かなんて見ていないのだから。
樹さんと一緒にいるためにも、早くここから去らなきゃ……っ。
崩れ落ちそうになる身体を動かそうとした時だった。
「……!」
息が止まってしまいそうなくらい、ドクン、と心臓が唸る。
私の目に映るのは……樹さんの笑顔だった。
西岡さんに寄り添って鏡を見ながら話し掛けている笑顔は……まぶしそうで、嬉しそうで、幸せそうで。
どう見ても、幸せいっぱいの結婚間近のカップルの姿。
一気に血の気が引いていくのがわかった。
目に映る光景を信じたくない。
これはきっと何かの間違いだ。嫌な夢でも見てるんだ。
って思いたいのに……目に映るものが真実。
樹さんと西岡さんが結婚するという話は真実だったんだ。
そして、西岡さんの忠告も、言動も、すべてが真実。
嘘だったのは……樹さんの言葉だけ。
「何で……?」
信じてたのに。
私はふらふらと上手く動いてくれない足を何とか動かして、歩き出す。
もう、何も考えられなかった。
真実を確かめようともせず、樹さんと一緒に居たいからと西岡さんの気持ちも考えようとせずに黒い気持ちを持ってしまった私に、罰が下った瞬間だった。

