「……さん?飼い主さんっ?」
「え……?」
すぐ横から聞こえてきた声の方をゆっくりと振り向くと、さっき受付にいたスタッフさん……西岡さんの姿があった。
私はぼんやりとそのキレイな人を見つめる。
何だか心配そうな表情をしているように見えるのは気のせいだろうか?
「大丈夫ですか?顔真っ青ですよ」
「あ、だ、大丈夫、です……」
「西岡さん、はずしてもらおう。待合室で休んでもらった方がいい」
「そうですね。じゃあ、行きましょうか」
「え、でも、コタロウが……」
西岡さんに肩を抱かれ、コタロウから離れるように促されるけど、私はそれに対して抵抗する。
こんな時にコタロウのそばを離れることなんてできない。
コタロウが辛い思いをしているのに、目を逸らすことなんて。
私が動こうとしないことに気付いたのか、虎谷先生から私を諭すような冷静すぎるほどの声が聞こえてきた。
「コタロウくんのことなら心配ありません。責任を持って治療しますので」
「虎谷先生の言うことを信じましょう?さ、こちらに」
「あ、よ、よろしくお願いします……!」
コタロウから手をそっと離すのと同時に、虎谷先生から「はい」という落ち着いた声が聞こえてきた。
決して温かい声とは思えなかったけど、私は不思議とその声に安心感を覚え、西岡さんに促されるままに治療室から出た。

