……私は目を疑った。
「……な、何で……?」
玄関の覗き穴の蓋を開け外を見てみると、そこに樹さんの姿があったからだ。
樹さんが平日に来るのは初めてのことで、さっきまでもやもやと考えていたことはすっかり頭から抜けてしまい、私は何かあったのだろうかと慌ててドアを開ける。
「樹さんっ!?どうして」
「みーこ、ダメだろ?いつも言ってるけど、簡単にドア開けるなよ。俺が後ろから誰かに脅されてここに立ってたらどうすんの」
「あっ、だって驚いちゃって」
「ちゃんと気をつけて。みーこに何かがあって困るのは俺なんだから。あ、コタも」
「!……は、はい」
樹さんの言葉に素直に頷くと、「よろしい」と樹さんの手が私の頭の上にぽんと乗った。
肌に直接触れられたわけでもないのに、私の心臓がどきんっと跳ねる。
「こんな時間に一体どうしたんですか?あ、上がってください」
「うん。ありがと。今大丈夫だった?急に来たりしてごめんな?っていうか、本当は昨日来たかったんだけど、あの後忙しくなって来れなくて」
“昨日来たかった”という言葉に、心臓がどきっと跳ねる。
どうして樹さんはそんな風に思ったんだろう?
もしかして……西岡さんとのことを言い訳するために?
また顔を出してしまったもやもやを振り切るように、私は笑顔を作って答える。
「私は大丈夫ですよ。今コタと遊んでまったりしていたところだったから」
「ほんと?それなら良かった」
靴を脱ぎながらホッとした表情を浮かべた樹さんの様子がいつもと何となく違う気がした。
それが何を意味するのかは今の私にはわかるはずもないけど。

