「西岡さんってば虎谷先生の腕に掴まるようにしてすごく親密そうに話してたんだけど、その内容が何と……、何と…………」
「もう、やだぁ!そんなにもったいぶらないでよぉ!」
「ふふっ。それがね……あの二人結婚するみたいなのよぉ!」
“結婚”という言葉に、ドクリと私の心臓が音をたてる。
「え!?それ本当なの?」
「本当よ。西岡さんが“結婚式のドレス選びに付き合ってくれないと、結婚やめる”なんて言ってて、あのクールな虎谷先生が“それは困る”って笑って了承してたから、間違いないわ。街灯に照らされる虎谷先生の笑顔がすごく素敵で驚いちゃった!たまにペットには笑いかけてくれるけど、滅多に笑うことってないじゃない?愛する人にはあんな風に笑いかけるんだってきゅんとしちゃった」
「やだー!それ、すごく素敵じゃない!やっぱり美男美女カップルは間違いなかったのねぇ」
会話が遠くで行われているような感覚。
すべてが非現実の世界で起こっているように感じてしまって、まるで他人ごとのように、私はその会話を聞いていた。
……お会計で自分の名前が呼ばれていることにも気付かないまま。
その後、どうやって家にたどり着いたのかもよく覚えていない。

