診察室から出た私は小さくはぁと息をついた。
いつから私はこんなに欲張りになったんだろう?
一瞬でもいいから、笑顔を見せて欲しかった、なんて。
樹さんは仕事をしているのに……。
それに、昨日ご飯を食べに行ったってどういうことなのかな?
……二人で行ったの?
……って、また樹さんのことを信じてないような思考が!
私は樹さんのことを信じるって決めたんだから、疑うなんてダメ!
勝手に浮かんできてしまう思考を振り払うように頭を横にぶんぶんと振り、落ち込んだ気分のまま、お会計を待つために待合室の椅子に座る。
そして、いつものように患者さん同士の世間話が耳に入ってきて、ぼんやりと聞き流す。
「そうそう!この間、見たのよ!夜に病院の外で虎谷先生と西岡さんが二人で話してるところ!」
その内容に私の身体がびくっと跳ねた。
……何、今のどういうこと?
樹さんと西岡さんが二人で?
……いやいや、仕事帰りに一緒になって話してただけ、だよね?
さっきのこともあって、西岡さんの存在に敏感になりすぎている私は気持ちを落ち着かせるように、ゆっくりと深呼吸をする。
息を吐ききった時、「でね」という声が耳に入ってきた。
患者さんたちはひそひそと内緒話をするように小声で話しているけど、何せすぐ近くに座っているということもあって、聞かないようにしようと思っても、その会話は自然と私の耳に入り込んできてしまう。

