「えっと……」

「うん」


ドンと来い!という雰囲気を先生は醸し出していて、私はこれ以上先延ばしすると、もっと言い辛くなると勢いのまま先生の名前を呼んだ。


「……い、樹さん……?」

「……うん。みーこ」

「!」


先生は嬉しそうに笑い、私に腕を伸ばしてきて私を包み込む。

先生の匂いにほっとして胸に顔を寄せると、耳に聞こえてきたのは……私と同じくらい速くなっている先生の鼓動の速さ。

……先生もドキドキしてくれてるのかな?

私が名前を呼ぶことで、喜んでくれるのかな?

そう思っていると、先生の口元を寄せて私の耳元で囁いた。


「いつか、“さん”もなしで呼んで」


その言葉に私の顔も耳も身体も、一気に熱くなってしまった。

恥ずかしくてつい「き、気が向いたら……」とかわいくない言葉を言ってしまうと、先生はくすくすと笑いながら「待ってる」と言ってくれた。

『待ってる』ってことは……これからも一緒にいてくれるってことだよね?

そう思えばすごく嬉しくなって、私は恥ずかしいくらいに顔をほころばせてしまった。

顔を上げるまでに表情を引き締めないと、と思いながらふと目線を落とすと、そこにはいつの間に起きたのかコタロウが私のことをまんまるな目で見つめている姿があった。

あ、コタロウには見られちゃった。