診察室に入り、私はコタロウがキャリーバッグから出される光景を呆然と見ていた。
「コタロウくん、もう大丈夫だからな」
タオルでくるんでいた前足が姿を現すけど、さっきよりも血が出ている気がした。
赤く染まってしまった前足が痛々しすぎて、涙が出そうになってしまう。
何で、コタロウがこんなことに……っ!
お願い、助けて……!
「コタロウくんの身体を押さえててもらえますか?安心しますから」
「は、はいっ」
言われるまま、私はコタロウの身体に触れる。
身体がぷるぷると震えていて、その温かさがいつもよりも低く感じてしまうのは気のせいだろうか?
そう思ってしまえば、さらに不安が襲ってきてしまった。
私はたまらず処置を始める先生の手元を見ながら、ぽつりと言ってしまう。
「た、助かるんですよね……?」
「大丈夫ですよ。ガラスか何か……鋭いもので切ったみたいですね」
「!」
鋭いものって何?何でそんなものがベランダに?と考えたけど、目に映ってしまった毛の隙間から覗いた傷口に私は血の気が引いていくのを感じて、それ以上考えることはできなかった。
嫌な汗が出てくる。
目の前がゆらゆらと揺れる感覚。
でも、コタロウが苦しんでいるのに目をそらすことなんてできない。
治療されているからか、コタロウの身体が時折びくんっと跳ねる。
私は胸の辺りがもやもやと渦巻く感覚を持ちながら、丸いシャンプーハットみたいなもの(“エリザベスカラー”という名前だと後で知るのだけど)を付けられた後、傷周りの消毒や麻酔、毛を刈られて治療され始めたコタロウの足をじっと見つめていた。

