「……あ、あの」
「うん」
頷いただけのその甘すぎる声さえも私を翻弄してきて、私の顔は一気に熱くなってしまった。
先生から私にはあまりにも強すぎるフェロモンが放出されていて、どうにもこうにも、心も身体もうまく動いてくれないのだ。
「……っ」
完全に先生の雰囲気に呑まれてしまった私が何も言えずにいると。
「……やっぱり、急にこんなこと言って、困らせた?」
「や、えっと……」
「だよな。ごめん。……でもさ、俺のわがまま聞いてくれない?」
「!」
「……名前、呼んでほしいんだ」
「っ!」
先生の瞳がもう我慢できないと言うように、まっすぐと私を捕らえる。
先生が言いたかったことは、本当はわかってた。
……“先生”じゃなくて、“一人の男”として、その名前を呼んでもらいたいんだって。
その視線と言葉から私は逃げられるわけはなくて、呼ぶしかない、と観念する。
……というか、そんな風に思ってもらえることがすごく嬉しいというのが本音だった。
でも、名前で呼ぶといっても……なんて呼べばいいんだろう?
先生の名前は“虎谷樹”。
さすがにいきなり下の名前で呼ぶのはハードルが高いし、今は“虎谷さん”かな、やっぱり……。
もしずっと一緒にいれるなら……少しずつ呼び方を変えていくのも、きっといい。
“先生”と呼ばない決心をして、私はすぅっと息を吸い込んだ。
……覚悟を決めろ、私。

