「……みーこ、とは何でしょうか?」

「ん?坂本さんのことだけど?」

「私、ですか……?全く話が見えないんですが、何の話ですか?」


先生が何を言いたいのかわからなくて、私は首を傾げる。

すると、先生がこっちにおいで、と手を上下に振った。

私は素直に先生のそばに移動し、ちょこんと座る。


「みーこ」

「へ……、んっ!」


先生の言葉に目を向けた途端降ってきたのは、先生の唇だった。

それとともに……夢じゃないんだ、とやっと少し信じることができた。

何度か食まれて、離れる。

すごく嬉しかったけど、その反面、コタロウが私と先生のことをじっと見上げていて恥ずかしくなってしまう。


「な、何するんですか……コタ見てるのに」

「いいだろ?ちゅーしたかったんだから。コタはこれからずっと俺たちのこと見ることになるんだし、そのうち慣れるって」

「!もう、意味わかりません……っ」


ぶぅと頬を膨らませると、先生がくすくすと笑いながら、私の頬をつんと人差し指でつついた。

私の口からぷと空気が抜ける。


「んーじゃあ、コタはこれでちょっと遊んでて」


先生はそう言って、あぐらの間に入れていたコタロウをあぐらの外に出し、“ころりんぼぉる”とねずみのおもちゃをコタロウに見せたかと思えば、ぽーんとコロコロトンネルに向かって投げて見事にインさせた。

コタロウはそれを追い掛けるようにして、コロコロトンネルの中にずさーっと潜り込み、中で遊び始める。