「あら、すっぱりいってるわね……」
「西岡(にしおか)さん、どうかしたのか?」
「あ、虎谷(とらたに)先生。ちょうどいいところに。ネコのコタロウくんが怪我したようで」
「怪我?どんな」
「左前足がすっぱり切れてるみたいで。傷は深くなさそうですけど、少し出血が多いので気になりますね……」
「出血が多いならすぐに止血した方がいいな。すぐ診ようか」
「はい」
私はコタロウのことに精一杯で、二人の会話をただぼんやりと聞き流すことしかできなかった。
とにかく早くコタロウを助けて、という気持ちでいっぱいだったのだ。
キャリーバッグに突然伸びてきた大きな手に、私はびくりと身体を震わせてしまう。
「コタロウくんを診察室につれていきますから、飼い主さんもご一緒にどうぞ」
「!あ、はい……っ」
水色がかった白の上下を着た男の人……虎谷先生が待合室にいる人たちに何か言葉をかけたことも私の耳に届くことはなく。
その後ろを、私は必死についていくことしかできなかった。

