「……それ」
「え?」
ふとコタロウから目線を上げると先生の顔がすぐ近くにあって私が反射的に後ずさろうとした時、先生のコタロウを抱えていない方の手が私の腕を掴んだ。
「っ!」
「……俺にもその表情、向けてよ」
「ん……っ」
手をぐいっと引かれて視界が暗くなった途端、柔らかいものが私の唇に触れた。
それは……さっきつい見とれてしまっていた先生の唇。
あの綺麗な整った唇が自分に触れているのかと思えば、ドキドキがさらに高まっていく。
予想のできない先生の動きに身を任せていると、すぐそばからにゃおとコタロウの鳴き声が聞こえてきて、私は目をぱちっと開けてしまった。
それと同時に虎谷先生の唇が離れ、虎谷先生もその声の方向に顔を向けた。
私と虎谷先生の目線の先にいたのは、先生の肩の上で目をくりくりとさせたコタロウがこっちを向いている姿だった。
「っ!」
い、今の、見られてた……!?
見られた相手は人間ではなく、ネコであるコタロウだというのに一気に恥ずかしさが襲ってきて、顔が急激に熱くなったのがわかった。
私は咄嗟に両頬を手で押さえた。
うそうそうそ!
コタロウに見られていたなんて、すっごい恥ずかしい……!

