リビングのドアが閉まっていることを確認して、玄関のところに置いている木製の柵を開ける。
先生が以前来ていた時まではなかったもの。
コタロウ迷子事件の時に先生に言われて、置いたものだ。
先生にも上がってもらって、二人で洗面台に向かった。
習慣を覚えてくれていたんだと気付けば嬉しい気持ちが広がる。
手を洗い終わった先生が、同じく手を洗い終わってタオルをハンガーに掛けていた私に話しかけてくる。
「ちゃんと玄関に柵置いたんだな」
「あ、はい。もう二度とあんな悲しい思いはしたくないですから」
「うん。そうだよな。いい子いい子」
「っ!」
虎谷先生の手が私の頭にぽんっと置かれて撫でられたのと同時に、私の心臓もぽんっと跳ねた。
今まではこんな風に触れられることはなかったし、その状況がむず痒くて、でも嬉しくて私は顔を緩ませてしまう。
ちらっと先生の顔を見上げると、先生も笑ってくれていた。
何だか照れくさくて私がささっと洗面所を出てリビングのドアを開けると、珍しくにゃあにゃあと鳴きながらコタロウが私の足元にやってきた。
こんなにしきりに鳴くことはなくて、私は慌ててコタロウのことを抱き上げる。
「コタ、ただいま。どうしたの?具合悪い?」
「え?」
「や、いつもこんなに鳴かないから……」
「どれ?コタロウ、おいで」
先生の手が私の胸の中にいたコタロウを抱き上げる。
するりと何のためらいもなく伸びてきた先生の手が今にも私に触れてしまいそうになってドキッと心臓が音をたてたけど、コタロウのことが気になって、すぐにコタロウに意識を向けた。

