「……うん。信じる」
「!」
「自分のことを信じろって言っておいて、相手のことを信じないなんてフェアじゃないし……それに、坂本さんは嘘をつくような女とは思えないし」
「!」
「な」と言って先生は笑う。
「コタロウにも近付きたかったから、どっちも手に入れば一石二鳥ってやつだよなーとかって考えてた」
「!……ず、ズルいですね」
「くくっ、やっぱり?でもさ」
「え?」
先生がぴたっと立ち止まり、ひょいっと私の顔を覗き込んできた。
私も慌てて歩く足を止めて一歩下がるけど、繋がれた手のせいで先生との距離は変わらない。
「!」
「俺だって、坂本さんに近付くことに必死だったんだよ。くすぶってた片思いを成就させるチャンスだったんだから。許してよ」
ニヤ、と笑って虎谷先生は私の手を引いて再び歩きだした。
ちらっと見上げた先生の表情は、焦りまくっている私に反して、飄々としたものだった。
「……やっぱり先生はズルいです」
私はこんなに先生の言葉に振り回されているというのに。
「え?」
「何でもありません!」
悔しいのにすごく嬉しくて、私はにやけそうになる顔を必死に引き締めた。
これが先生にバレてしまえば、きっとまたからかわれるに決まってる。
それこそ、悔しいから。

