*
あの後、私と虎谷先生は私の家に向かっていた。
こうやって二人で歩くのは久しぶりで何だか照れてしまう。
「知ってた?坂本さんに対しての片想い歴が長いってこと」
「……はい?」
突然、先生がそんなことを言い出して、私は首を傾げてしまった。
片想い歴が長いってどういうことだろうか?
だって、先生と初めて出逢ったのはほんの数ヶ月前のこと……。
“数ヶ月”を“長い”と言ってしまうには、さすがに大袈裟すぎる。
というか、ついさっき先生の気持ちを知ったんだから、「知ってた?」と聞かれても知っているわけないのだ。
「初めて公園で坂本さんを見た時、どこかのワンちゃんを撫でながら笑っててさ。その表情がツボ過ぎてすっごいかわいくて、俺だけのものにしたい、って思ったんだよな。一目惚れってやつ?」
「……あの?」
いろいろ気になる言葉があるけど……先生は一体、何の話をしているんだろうか?
私がさっきとは逆側に首を傾げると、先生がくすくすと笑って話し始める。
「暴露するけどさ、坂本さんが土曜日に柚ヶ丘公園でひなたぼっこしてること、結構前から知ってたんだ」
「……。えぇっ!?」
「さすがに話し掛けることはできなかったけどさ、一瞬でも坂本さんのことを見れた日はガキみたいに喜んでた。“ザ・ガキの淡い片思い”みたいな?」
「!……あ、あの……っ?」
突然飛んできた衝撃過ぎるセリフ、そして絡んできた手、目を細めて私を見る視線に、私は狼狽えてしまう。
くすりと先生の口の端が上がり、また私の心臓が飛び跳ねる。
う……っ、心臓持たない……!
想いが通じたと言ってもその状況をまだ完全には信じ切れていない上、そういうことにあまり慣れていない私は虎谷先生の言動に翻弄されてドキドキしてしまうばかりだ。

