「はい、じゃあ、10秒以内に言わなかったらキスするから」
「は!?」
「10~、9~、」
「ちょ……っ!?」
あれよあれよと話を進められてしまって慌てる私をよそに、虎谷先生は冷静な顔をしてどんどんカウントダウンを始めてしまった。
その数字が小さくなっていくのとは逆に、大きくなっていくのは私の焦りと心臓の鼓動だった。
「8~、7~、」
「せ、先生待ってくださいってば……っ」
私が焦って声を掛けても完全にスルーで、虎谷先生は「6~、5~」とどんどん数字を小さくしていく。
そして……5を過ぎた瞬間、虎谷先生が私の腕を掴み、愉しそうな表情をして私に近付き始めた。
その行動に、私は虎谷先生が言っていることは本気なんだと確信してしまった。
腕を掴まれてしまっているから、もう逃げることもできない。
「4~、3~、」
ど、どうしよう……!
このままじゃ……本当に……っ!
「2~、いーち」
も、もう、ダメだ……!
私は目をぎゅっとつぶり、覚悟した。
「ぜ」
「わ、わかりました!言います!言いますから……っ!もう、これ以上は……っ」
「……本当に?」
「ほ、本当に!」
あと10センチで触れてしまうというところに先生の顔があって、目線を落とすとすぐにそのキレイな唇が見える。
私はその距離に耐え切れず、先生の手がするりと離れたのも見計らって、一歩後ずさりをして先生のことを睨んだ。

