「坂本さんが好きなんだよ。もう抑えきれないくらい。坂本さんの気持ちも教えて」
耳元でそう囁かれてしまって……私の気持ちは簡単に揺らいでしまう。
ふわふわと先生の方に引き寄せられる感覚。
……その言葉を信じたい、と。
……自分の気持ちを伝えたい、と。
先生のことがすごくすごく好きなの。
……これ以上無理だと思った。
気持ちを誤魔化すことなんてできない。
何よりも、真っ直ぐと気持ちを伝えてくれる先生のことを信じたいと思ってしまった。
「……本当に?本当に西岡さんとは何でもないんですか?」
「うん。本当に何もない。確かに西岡さんのことは信頼はしてるよ?でもそれは仕事仲間だからだし、女として見たことは一度もない」
「……あんなにキレイで素敵な人なのに?」
「キレイだからって好きになるものでもないだろ?っていうか、もしかして断る理由見つけてる?」
「違……っ、じゃなくて……っ」
そうじゃない、と首を横に振ると、虎谷先生が私の顔を覗き込むようにして首を傾げた。
その視線は変わらず、私をとらえる。
「じゃあ、何?」
「……し、信じられないんです……!誰がどう見ても、虎谷先生と西岡さんはお似合いなんです。動物病院の患者さんたちだって、みんなそう話してて……。でも西岡さんと違って、私は何のとりえもないし、美人なわけでもないし、何も持ってないのに。持ってるとしたら、思い当たるのはコタの飼い主っていう立場だけで。だから、コタロウに会いたいがために先生は“好き”なんて言葉を言ってるんじゃないかって」
「……くっ、何それ?やっぱり坂本さんっておもしろいよな」
くすくすと笑い出した虎谷先生に、やっぱりからかわれてる!と思ってしまった私は顔を上げて、虎谷先生のことを睨んだ。

