「俺が会いたいのはコタロウだけじゃないんだけど」
「……?」
……会いたいのはコタロウだけじゃない……?
それってどういう……
先生の言っている言葉の意味が理解できなくて考えてしまっていると、私を抱きしめる先生の手がそっと私を離した。
つい先生の顔を見上げてしまうと、ばちっと視線がぶつかった。
すぐに目をそらせば良かったのに、私はそうすることができなかった。
……完全にとらえられてしまったのだ。
先生の真剣な表情に。
先生の指が私の涙を拭う。
「俺が言ってる意味、わかってる?」
わからない、って言いたい。
言葉の真意は全く見えないのに、私の頭の中に浮かんでしまう淡い期待。
自分に都合のいい考えだってわかっているのに、単純な私の頭では先生の言葉からはそれしか思い浮かばなかった。
でも、西岡さんがいるのに、そんなのありえない。
……先生が『私に会いたいと思ってくれているのかも』だなんて。
そんなわけないのに……。
バカな考えをしてると気付き、私は顔を再び虎谷先生からそらした。
「坂本さん」
「っ!」
「こっち向いて。頼むから」
「……」
私はフルフルと首を横に振る。
こんな酷い顔見られたくないし……先生の顔を見たら、自惚れの気持ちが大きくなってしまいそうだから。
……違う。
そんなわけない。
期待なんかしちゃダメだ。
期待をして傷付くのは自分なんだから。

