「あ、美夜子。コタロウ食べ終わった?」
「あ、うんっ」
「じゃあ、お皿ちょうだい。片付けてくるから」
「うん」
私は璃世の言葉にハッとし、コタロウの目の前に置かれたお皿に手を伸ばす。
コタロウを驚かせないように。怯えさせないように。そっと。
でもその私の心配は無意味だったようで、コタロウはその場から動くことなく私をただじっと見ているだけだった。
今までなら逃げられてしまうような距離に私の手があるのに……。
だいぶ慣れてきたかもしれない、とは思っていたけど、受け入れてくれた感じがするのは気のせいだろうか?
そう思いながら、お皿を取ろうとした時だった。
「っ!?」
想像もしていなかった状況に、私はビクッと身体を震わせてしまった。
……嘘……っ!
今、私の手の甲に触れている存在。
それは……コタロウ。
私の手が誤ってコタロウに当たってしまったわけではなく、コタロウから擦り寄ってきたのだ。
突然のことに私は何が起こっているのかわからなかった。
触れるぬくもり。ふわふわの毛。
はじめての感覚にテンパってしまいながらも、もっと触れたいと欲張りな考えを持ってしまった私は、そっと手のひらを返して震えそうになる手を必死にこらえて、コタロウの首辺りにそっと触れる。
この時の私は拒否されることなんて、頭になかった。
ただ嬉しくて、ただ触れたくて。
するりとコタロウを撫でると、コタロウは気持ち良さそうにさらに私の手に擦り寄ってきた。
その行動が嬉しくて、泣きそうになる。
鼻がつんとして、目頭が熱い。
「……あったかい」
「え?あらやだ。コタロウってば、美夜子のこと大好きなのね?良かったじゃない~、美夜子」
「う、うん」
璃世の言葉にも感激してしまって、さらに目に涙が浮かんできたのを感じながら、私はコタロウの身体をゆるりと撫でた。
……それが、私とコタロウとのはじまりだった。
○。

