「明日香ー、数学のプリント貸して!」

「あー、いいよ」

「さんきゅ!」

康汰があたしの数学のファイルを取って、自分のに写していく。

それを横目に見ていると、仲良くなったばかりの咲希が目をまんまるくさせて、あたしと康汰を交互に見る。

「えっ…。明日香?……呼び捨て………?」

「ん?…あ、幼稚園からの幼馴染みなの。」

「あね!そっか!そうゆうことか!
てっきり、付き合ってんのかと思った」

康汰と!?

ないゎ~(笑)

「ないないない!!康汰なんて、恋愛対象として見れないから(笑)あたしが、康汰と付き合うとか絶対ないわ」

「そーなんだぁ。幼馴染みとか憧れだけどな(笑)」

「ないない(笑)」


あたし、小林明日香はつい3日前、さっきの幼馴染みの神川康汰と、2組の前田奈々とともにこの、一ノ橋中学校の1年生となった。

小学校から中学校って基本、みんな同じだけど、幼稚園からっていうのは康汰と奈々の二人だけ。

でも、奈々とは小学校のときは同じクラスになったことが、あんまりない。

それに対して康汰は、小3から今年も同じクラス。

お互いの親も、また同じなのねと、笑ってたね。




それから、2ヶ月経ったある日。

康汰が女子のほっぺたをムニムニしてるのを見た。

…?付き合ってんのかなー。

まあ、あたしには関係ないし、邪魔しちゃあいかんよね。

そう思ってあたしは、遠回りして用事を済ませた。

その子、同じクラスだから後で問いただしたら本当に付き合ってないと言った。

んー納得いかないなぁ。

じゃあ、康汰の片想い?

でも、康汰って好きな子にそんなに、積極的だったっけ?

……わかんない!

あたしがどうこう言う問題じゃないから、別にいっか。



と、思ってたんだけど…。

それから、大分中学校にも慣れてきたころ、康汰が他の女子にも、そうゆうことをしてるという話が耳に入ってきた。

実際、クラスでも何度かあたしも見たことある。

康汰って付き合ってる女の子がいても、みんなの前でそんなことしない。

むしろ、本当に付き合ってたら一言も話さないもんね。

つまり、とうとう康汰もチャラ男に足を踏み入れてしまったということか…。

なんか、少し寂しく思う自分がいたり……。



今はそうゆう時期なのかねー。

まあ、女の子を泣かせなければいいんだけどね(笑)


とか言っちゃって、あたしも、それなりにリアルな生活が充実してるんですね~(笑)

ちなみに、おとといからね(笑)

あたしは、康汰と違って、ちゃんとしてるもん(笑)

理科室に着き、特に何もすることがないので席についていると、右斜め前の咲希がなんか、急に振り向いたと思ったら、あたしを見るなりニヤニヤしだした。

「?何?どうした?(笑)」

「ねね、明日香、彼氏できたんでしょ?」

ほれ来た。

この話(笑)

「ま、まぁね。」

あたしがちょっと遠慮ぎみに答えると、すごいねーと言ってくれる咲希。

「え、どっちから?」

「あたしだよ。断られると思ってたんだけど、あっさりいいよって言ってくれて。」

「あね!すごいなぁ…。
まぁ……あたしもさ、今の総務にコクられましたけども……。」

今の総務……康汰じゃんっ!!

はぁ~やっぱりねぇ。

「あ、まじ?…で、それでOKしたの?」

「断ったよ」

あっけらかんと、咲希は言う。

「なんで?!」

「いやだって……神川のことあまり知らないし、なんかチャラいんだもん。」

あー確かに。

言えてるわ(笑)

てか、康汰もフラレることあるのねー。

「前はあんなんじゃなかったけどなぁ」

そんな話をしてると、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。



……ぁあ、あと、まだ30分もある…。

てか、咲希の後ろから見てて思ったんだけど康汰、咲希のことチラチラ見すぎね(笑)

康汰はあたしたちの右側の列で、あたしより前の席だから、さっきから咲希をチラ見してんのバレバレだし(笑)

しかも、咲希の方を見れば必然的にあたしとも目が合うわけで、その度あたしがにやけると、見てないよアピール(笑)

ホント康汰ってわかりやすい。



とか面白がってるけど、やっぱりなんか、寂しい気もする。

なんでかなぁ。

康汰のこと、好きとかじゃないのに。

いや、これに関しては好きとか関係ないのかもな。

今のところ、8年一緒だもん。

それだけ、一緒にいればこうなるよなぁ。

こうなるのかなぁ……。

そりゃさ、康汰も恋くらいするし、失恋だってするよね。

とかさ、いちいち考えてしまうのはそれだけ一緒にいる幼馴染みだから?

……………………。

うん。

いくら考えても答えを誰も教えてくれないので、今は目の前の幸せだけを見ときまぁす(笑)