「松星季蛍さーん。」
と、呼ばれてまだ嫌々を言う季蛍を連れて診察室へ入る。
「季蛍…。熱高いですね」
高島がカルテ越しに言う。
「あぁ。よろしく」
貴方を丸椅子に座らせて、俺はベッドに腰掛けた。
「んー。じゃあ最初聴診からね」
極力優しい口調で言う高島。
だけど、季蛍は椅子を後ろに引きずり、下がる。
「季蛍。痛いこともしないから。聴診するだけだから」
高島がそう微笑むけど……。無視。
…………聴診器恐怖症だけにはなってほしくなかった…
あんなことがあったんじゃ、こうなるのもしょうがないし、よくわかる。
だけど、体を壊しやすい季蛍が、聴診器を受け入れてくれなかったら…。
だから、こんな所で甘やかしはしない。
あとから後悔するんだし。
「季蛍…。おいで」
高島がこれでもかと言わんばかりの口調で言う。