医局で頭を悩ませていると、
「………蒼先生」
か細い声が聞こえる。
看護士が呼んでいる。
「…………何?」
「…あの。……………果織ちゃん…が、お家に帰りたいって…………」
「あぁ。聞いた。考えとく」
「………あ、そうですか、わかりました」
正直言えば、今の果織ちゃんが一度家に帰るというのは、難しいことではない。
でも、昨日あんなに苦しい思いをした果織ちゃんを、1人家に返すわけにもいかない。
俺がいないから。
いつまた苦しくなるかわからないから。
点滴追加しなきゃいけない状態の果織ちゃんを、
お祝いに行かせることは。