朝、患者さんの病室を回りながら、最後に果織ちゃんの病室へ。
「おはよう。果織ちゃん」
「…あ、島内さん?」
「名前、覚えてくれたんだね。ありがとね」
「たくさん来てるもん。覚えたよ」
「フフ、はい、検温。チャック開けてね」
ウサギのパジャマを着た果織ちゃんがチャックをおろす。
「挟むね」
体温計を脇に挟み、鳴るまで腕を押さえる。
ピピピピッ ピピピピッ
「鳴ったね。見せて?」
受け取った表示が、8度ぴったりを示している。
「………果織ちゃん、」
さっきは我慢して喋ってくれていたのか、額に汗をかきながら窓の方に体を向けている。
「……果織ちゃん、具合…悪い?」
「大丈夫だよ。怠くない…」
と言うけど、窓の方に体を向け、視線も窓を見て、微かに聞こえる声でそう言う果織ちゃん。
「果織ちゃん、蒼先生に診てもらおうか」
でも、体と顔はそのままで首を振る。
「………お熱高いし。蒼先生呼んでくるね?」
そう言うけど、果織ちゃんは首を振って、断固として縦に振らない。
「……果織ちゃん、、」
その時、病室のドアが開く。
「おはよ~う。果織ちゃん」
蒼先生が、手にファイルを持って入ってきた。
「蒼先生おはようございます」
「あ、島内さんおはよう。検温済んだ?」
「はい、あの…………。」
「……ん?」