「…え、、
阿部くん…なんで泣いてるの?」


「…は?」


俺別に泣いてなんか…



頬を触った瞬間、手が濡れた。


俺は気付かぬうちに、
涙を流していたんだ。



「あーわりぃ!目にゴミ入ったみたい!」


「え?大丈夫?」


「大丈夫大丈夫!
ちょっと洗ってくるわ!」


そう言って、病室を出た。




良介さんが好き…か。



俺にはもう勝ち目なくなったな。



「どうかなさいました?」


「あ…宮田さん。」


俺は軽く会釈をした。


「高遠さんと何かありました?」


きっと俺が涙を拭いてる姿を見て、宮田さんはそう言ったんだろう。


「いえ、目にゴミが入っただけですから。」


「無理なさらないでください!わたしなんかでよければ、話…聞きますので。」


「ありがとうございます。
でも俺、そんな切羽詰まってないんで。」



看護婦さんに相談とか、できねぇよ。


弱い人間だなって思われたくないし、
第一、病院内で話なんかして鈴香に聞かれたらたまったもんじゃない。