「えっとー、じゃあ続きを。
その先輩の名前が確かー…蒼井さん。
蒼井〜…なんだったかな〜
ごめん、忘れちゃった」


「あおいって、苗字なんですね?」


「そうそう、草冠に倉って書いて、井戸の井で蒼井。たしかそういう苗字。
たしか大学は違うんだけど、サークルでの付き合いとかで出会ったって言ってた。
すごく…優しそうな人。」



お姉さんは少し話すのを止めて、
コーヒーを口に流し込む。


「…あと、何話せばいいかなっ…
なんかごめんね、情報少なくって。」



「いえ、蒼井さんって人のこと知れただけでもよかったです。」



「あ、そうそう。鈴香の借りてたアパート引き払って友人とルームシェアしてるって言ってた。」


「ルームシェア?」


「そう、意外よね。あの子そういうの苦手そうなのに。
なんか学校の課題とか忙しくてバイトのシフト全然入れなくて、家賃滞納しちゃったから追い出されたって。
それで、友人の家に転がり込んで、ルームシェアって形でやってたみたい。」



「なにそれ高遠ちゃん成長〜」


「前の鈴香にしたら、ありえないレベルよね」



家賃滞納しちゃうほど、
忙しかったのかな、大学。


俺と連絡なんかとってられるほど、
余裕なかったのかな。