「鈴香」



そう呼ばれた気がした。


誰だろう、懐かしい声。




この声は、

…阿部くん。



…いや、優馬。




思い出した。

優馬。

大好きな優馬。




わたしのことを救い出してくれた。





「鈴香」



優しい声でわたしを呼んでくれる。


暖かい温もりでわたしを包み込んでくれる。





高校のとき、

登校中にぶつかって、

同じクラスで仲良くなって、

2年になって付き合いはじめて、

彼はすごく優しく接してくれて、






そうか。


わたしの中で空っぽだったのは

優馬っていう存在だったんだ。