あなたを好きだったのは、いつの頃だったか…。



あれは、当時付き合っていた彼との間に、冷たい空気が流れていた頃。
 


私は、遠くにいる彼に会えない淋しさや辛さを、持て余していた。
 


そんなとき、近くに現れた「理想の彼」。



あの時は、ぽっかり空いた心の隙間に



悔しいくらいに溶け込んでくるあの人が、



たまらなく愛おしかった。



職場に、好きな人がいるという楽しみとスリル。



そんな危険な遊びを楽しんだ1ヵ月。
 


あれは私にとって本当に人生の一瞬の出来事だったように思える。



彼とあいさつを交わしたこと。



彼に仕事を頼まれるときのあの香水の匂い。
 


彼の電話の声。



私に歩み寄ってくる足音。



ふと目の前に現れる彼の優しい笑顔。
 


触れる唇。



抱きしめた彼のぬくもり。



速くなる鼓動と時計の音。
 


全てが、短い夢のようで、



今、100ページの人生を描くとしたら、
 


きっと1ページにも満たない出来事でしかなかったのかもしれない。
 
 
 
あの時、気持ちに正直に生きて、



今、こうして、あなたを懐かしく思っています。
 


幾度となく送られてきたメール。



最後の一度だけ、返信をしなかったこと…。
 


あれは私の区切り。



これ以上、期待を持たせないためのケジメ。
 


たぶん、わかってると思います。



そして辛かったでしょう。
 


でも、あなたには帰るべき場所がある。



愛すべき家族がいる。
 


あなたの中で、私はどんな存在だったのでしょう。



少しでも人生を彩る花になれたのでしょうか。
 
 
 
 
年をかさねて、ふと振り返った時、私は鮮やかにあなたを思い出すでしょう・・・。
 
 



end