そして下を見た俺は、足をどかせて初めて、違和感の正体がウサギの人形だということに気付いた。 廊下に座り込んで悲しげな顔をする1人の女が、両手で人形を抱きしめて涙を浮かべている。 「モケちゃん……痛かったよね?ごめんね、わたしが落としたばっかりに」 俺が踏み付けた人形に謝るその女。 なんだこいつ。 変な奴。 人形に話しかけるなんて、幼稚園児かよ。 しかも、よく見るとお世辞にも可愛いとは言えないそのウサギ。 目玉が飛び出しているような作りで、グロいといった方が合っている。